下肢静脈瘤の症例

2020.06.06

下肢静脈瘤で足に深い潰瘍ができてしまった症例

症例 1.  60代男性。5年前から両側の下腿浮腫があった。調理の仕事が忙しく受診できずほっておいた。2ヶ月前に、左下肢くるぶしに傷ができた。1ヶ月近くの皮膚科に通院していたが潰瘍が治らず、大きな病院へ紹介となった。そこでは、イソジンシュガーパスタ軟膏の処置を1ヶ月間受けていたがよくならず、下肢静脈瘤が原因と言われ、当院へ紹介になった。少し触れるだけで痛みとビリビリする感じが出て眠れない。汁が出てきて困る。仕事もしなければいけないとのことで来院されました。弾力性ストッキングは、使用しておらず、今まで話も上がらなかった。

初診時の下肢の所見;下腿部皮膚は、萎縮しており、皮膚が硬く(皮膚硬化)なっており、周囲の皮膚は、熱感を伴い、発赤し色素沈着している。潰瘍は、深く筋肉層まで達している。潰瘍底は骨膜まで達していた。シュガーパスタ軟膏が塗布されている。

治療方針;痛みがかなり強く、創部の感染も伴っており創部の細菌培養を提出した。弾力性包帯、弾力性ストッキングは、痛みがつよく使用できないので、痛み止めの処方、抗生剤の処方を行い、早期の下肢静脈瘤のレーザー手術を行うこととした。創部の処置は、手術の際に麻酔をかけて痛みがない状態でしっかり行うこととした。

超音波検査では、左大伏在静脈の逆流が見られていた。傷(潰瘍部)に向かう静脈瘤があり、これが悪さをしていると考えた。

手術は、消毒したり触ったりすると痛がるので、静脈麻酔、吸入麻酔を施行して痛みを感じないように、少しボーとしてもらいながら、下肢静脈瘤血管内焼灼術と潰瘍部デブリードメントを施行しました。手術中のことは、痛みもなく覚えておらず、術後も痛みを感じないで歩いて帰宅となった。

↓↓術後経過1週間の写真です。創部は、綺麗になってきましたが、まだ不良肉芽があり、組織の盛り上がりがわるい状態です。細菌培養をおこなって、細菌がいないことを確認して、閉鎖療法を行うこととしました。閉鎖療法は、空気と触れることを防いでくれるため、痛みもかなり軽減します。また、浸出液に含まれるサイトカインが創傷治癒に良いため綺麗に盛り上がってきます。キズパワーパッドと同じです。

↓↓↓ 術後1ヶ月の所見です。だいぶ盛り上がってきました。ここまで、手術と閉鎖療法と弾性ストッキングの効果です。

↓↓↓術後1ヶ月半。もう少し、盛り上がりにかけるので、閉鎖式陰圧療法(持続的に陰圧をかけて組織を盛り上げる方法)を行なっていくことにしました。

↓↓↓術後1ヶ月三週間。閉鎖式陰圧療法を一週間継続していただいた結果、かなり盛り上がり改善。

↓↓↓術後2ヶ月経過。この後は、二週間に一度の外来受診へ変更。

↓↓↓術後3ヶ月経過、かなり改善した。ご本人も楽になり、終診とした。

今後は、弾力性ストッキングを使用して、足をいたわっていただくように説明いたしました。下肢静脈瘤の治療をしても、その他の部位にできやすい環境や体質があるので、弾力性ストッキングは、もう治療したからいらないというのではなく、今後も時々はいていただくのが良いと思います。

この患者様のように、皮膚科、大きな病院へ受診してもよくならないケースが多く、患者さんも困っていることが多いようです。 困ったら、親身になって治療に当たっていますので、気軽にご受診ください。

 

2018.09.21

足の傷が治らない。下肢難治性潰瘍の治療の症例

症例 1.  80代女性。以前より、数年前から下肢浮腫が見られていました。脳梗塞の既往もあり、あまり動けず寝ている時間が長かったようです。2ヶ月前から、かゆみが強く、書いてしまうことが多く、足に傷ができて治らなくなった。近医の皮膚科にて、外用(塗り薬)などかゆみの治療、皮膚の潰瘍の治療を受けておりましたが、縮小傾向であったものの、治癒せず、廃用性浮腫、下肢静脈瘤を疑われて、潰瘍治療はじめてから3ヶ月経過して、当院へ紹介になりました。弾力性ストッキングは、ご本人履くのが困難(力がない。親指が痛い)で、処方されておらず、弾性包帯も使用していない状態でした。

初診時の下肢の所見;下腿部皮膚は、活動性潰瘍がみられており、一部不良肉芽がみられておりました。周囲の皮膚は、熱感を伴い発赤していました。湿疹は、発赤がみられており、じゅくじゅくして浸出液がでていました。

超音波検査では、大伏在静脈の逆流はありませんでした。すなわち、下肢静脈瘤から発生した傷(潰瘍)では、ないということです。廃用性浮腫で発生した、うっ滞性皮膚炎による難治性潰瘍と診断いたしました。動脈の血流は正常でした。

治療方針;難治性とのことで、細菌感染など評価する為に、創部の培養を行いました。すでに、皮膚科にて抗生剤の投与、創部の外用処置により細菌は、検出しませんでした。   力がなく弾力性ストッキングも使用できない状態でしたので、弾性包帯を使用する方針といたしました。といっても、ご本人で足に巻くことができないので、訪問看護など地域の連携にて、なるべく使用してもらう方針で行きました。創部処置は、フィブラストスプレー(創傷治癒を促進するスプレー)を使用して、圧迫療法(弾性包帯)にて経過見ておりましたが、一週間経過してもあまり改善がない為、下記の方法をおこないました。

陰圧吸引閉鎖療法(NPWT:negative pressure wound therapy) (保険治療)

これは、陰圧吸引をかけながら、細菌など様々な浸出を吸引してくれます。そして、陰圧吸引により、血管新生を促進させ、血流が不足しているところへの血管を補い傷を直しやすくする画期的な装置なのです。しかも、自宅で治療できる画期的な治療器具です。毎日、創部を洗浄する必要もなく、3日に1度来院していただき、創部を確認し、傷の治療を行っていきます。もちろんこの装置の上から、弾性包帯による圧迫療法も行うことができます。3日に一度通院していただき、フィブラストスプレーを使用し閉鎖療法、NPWTを交換します。NPWTは、一ヶ月間のみ保険算定できる装置であるため、私としても、なんとか一ヶ月で治さなければ、ならないというプレッシャーがあります。

一ヶ月後の所見です。

かなり潰瘍は、上皮化しており、周囲の炎症も改善してきております。創部の点状に赤く見えるのは、新生血管です。かなり潰瘍の盛り上がりが良好です。

 

経過3ヶ月の写真です。

今後は、弾力性ストッキングを使用して、足をいたわっていただくように説明いたしました。ご自分では、履くことが困難とのことで、訪問看護で週に2回履かせることで、経過を見てもらうようにしました。

今回は、下肢の難治性潰瘍で、皮膚科と連携がとれ、治療に結びつきました。難治性潰瘍の治療には、集学的な医療が必要です。私も自分の施設でできる限界を把握しながら、病院のフットケアチームに連携を取ることも必要と感じております。患者さんが、良いゲートキーパーである医師に巡り会うことが一番ですが、残念ながら全てが熱心な医師というわけではないので、かかりつけ医の先生と相談し良いゲートキーパーを紹介してもらうことが一番だと考えます。

当院では、再生医療第3種の申請もしており、様々な医療が気軽に受けれるように日々研鑽しております。いつでもご相談ください。

2017.08.18

YAGレーザーによる毛細血管拡張症(くもの巣状静脈瘤、網目状静脈瘤)の治療

症例2. 40代女性 17-18年前から、下肢の静脈が目立ち始めました。ここ数年特に目立ってきた。出産後から目立ってきた。時々重くだるくなるし、水泳していると、「それどうしたの?」と言われるので、見た目も気になってきた。6年前に、硬化療法をしています。硬化療法が術後の圧迫や弾性包帯にてかぶれたので硬化療法は、あまり気がすすまない。とのことで、当院へ受診となりました。

超音波検査;明らかな伏在静脈、深部静脈、交通枝に血流の逆流は、見られず、弁機能不全は見られませんでした。

初診時所見;両側下肢に毛細血管拡張あり、全体に広がっている。くもの巣状静脈瘤と網目状静脈瘤が混在しています。

治療方針;伏在静脈瘤もなく、毛細血管拡張のみであり弾力性ストッキングで保存的に経過みるのも一つの治療と説明しました。硬化療法は、術後の炎症後色素沈着が長期間(3ヶ月から半年)つづくことなど気になり、硬化療法は希望しないとのことでしたので経過観察としました。後日、美容皮膚科へ紹介しYAGレーザーの治療をする方針になりました。(この時、混合診療にならないように対応が必要でした。)

レーザー治療前

 

治療方針;くもの巣状静脈瘤(赤い毛細血管)と、網目状静脈瘤(青い血管)が目立っており、青い血管にも反応するYAGレーザー(保険外治療)にて照射する方が少ない回数で治療効果が期待できると考え、YAGレーザーを選択しました。赤い血管だけであれば、皮膚色素レーザー(Vbeam)が保険治療で照射できますが、青い血管もあり、保険治療は、3ヶ月に一度の治療であり、回数もかかるため、この患者さんには、不向きでしたので、YAGレーザーを使用して行くことが良いと判断しました。

YAGレーザー治療直後;血管に沿って、YAGレーザーを照射したところは、かなり腫脹(ミミズ腫れ)している。反応は良好でした。

術後1ヶ月半経過の写真です。かなり血管も退縮しております。一回でこれだけ効果は、かなり満足度も高い処置と言えます。色素沈着もなく経過良好でした。

2017.08.18

難治性潰瘍を伴った大伏在静脈瘤に対して血管内焼灼術(ELVeSレーザー)+静脈瘤切除術

症例 1.  70代女性。数年前から静脈瘤があった。1ヶ月前から、かゆみが強く足に傷ができて治らなくなった。最近、風に当たるだけで痛みとビリビリする感じが出て眠れない。皮膚科へ受診して塗り薬をもらっていたがよくならず、痛み止めを内服しても効果ないとのことで紹介来院されました。弾力性ストッキングは、ストッキングタイプを持っていたがはいていない。

初診時の下肢の所見;下腿部皮膚は、白色萎縮しており、皮膚が硬く(皮膚硬化)なっており、周囲の皮膚は、熱感を伴い、発赤している。潰瘍は、瘢痕(傷跡)を繰り返している。

治療方針;痛みが強すぎて、弾力性包帯、弾力性ストッキングも使用できないくらいで、炎症をとるために湿布薬など検討しましたが、触れるだけで痛みがあり、うずくまってしまうぐらいでしたので、まず痛みをとる方針にしました。感染がないことを確認し、ステロイド内服、鎮痛薬投与を開始しました。徐々に、炎症(赤み、熱感、腫脹)がよくなってきたので、傷(潰瘍部)を閉鎖療法(キズパワーパッドのような物を使用)を施行しました。徐々に、痛みがとれて楽になってきたようで、手術を行う方針としました。

超音波検査では、右大伏在静脈の逆流が見られており、傷(潰瘍部)の皮下に静脈瘤がうねうねとあり血流が豊富でした。これによりうっ帯し、炎症を起こしていることがわかりました。

手術は、消毒したり触ったりすると痛がるので、静脈麻酔を施行して痛みを感じないように、少しボーとしてもらいながら、下肢静脈瘤血管内焼灼術+静脈瘤切除(小さい3mmぐらいの切開)を施行しました。手術が終わった時には、「もう終わったの痛くなかったわ。全然わからなかった。」と手術中、術後も痛みを感じないで歩いて帰宅して行かれました。

術後経過3ヶ月の写真です。

今後は、弾力性ストッキングを使用して、足をいたわっていただくように説明いたしました。下肢静脈瘤の治療をしても、その他の部位にできやすい環境や体質があるので、弾力性ストッキングは、もう治療したからいらないというのではなく、今後も時々はいていただくのが良いと思います。

2017.04.12

下肢静脈瘤の症例について

下肢静脈瘤を治療するかご検討の方へ

当院で治療された患者様の治療経緯について、掲載してまいります。
治療をご検討されている方は、是非ご参考にしてください。